Lowny Alone

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夢と現の狭間の、白い鈴蘭の丘へ、ようこそ。

To the beginning that never begins. – 始まらない始まりに

____出血/24,10,29


このおはなしは、ひとりぼっちの男の子の、どこにでもある、普通のおはなし。



Arts of Lowny after 2025 – その後に描かれた肖像たち


To the flowers fluttering in the hills – 丘でたゆたう花たちに

孤独な彼は、この世の何処へ彷徨い続けるのだろうか。生か。死か。現の世界か。夢の世界か。それとも、、、

Lowny Alone – ローニー・アローン

恋する鈴蘭の子

ニヒルでクールだけど、服の一枚も着られないくらい、健気で素直で正直で、とっても素敵な男の子。やせこけた体つきで、あだ名はローニー。産まれた時から今まで、ずっとはだかんぼ。嫌いなふりをしているけれど、本当はすずらんとハートとりんごが好き。スケッチブックにお絵描きしたり、いろんな人のブログやエッセイを読んだりするのが趣味。自分をわけ与えたクマちゃん、メイリーとはいつもいっしょ。産まれてそう期間の経たない内に親に捨てられた子で、その名前もあくまで世間の通称であり、本名ではない。口調はやわらかく、自分以外の誰にでも親切で、困っていたらすぐに助けてくれるし、仕事も責任をもってやる。けれど、寡黙のポーカーフェイスで、どこかたどたどしくて、ぎこちなくて、なんだか人間っぽくないというか、よくできたロボットみたいに見えてくる。一見、もちろんかなりのへんてこりんではあるけれど、とても真面目ないい子であることには変わりない。

しかし、その名前の通り、彼は、恐ろしくひとりぼっちである。

彼は、本当の自分を、常に命がけで隠している。服すら着られずとも、自分を覆い隠せるものが何もなくても、せめて自分で自分を隠そうとしている。生身だけで、ぎこちないロボットのような鎧をつくり、どうにかして本当の自分を悟られまいと、必死に自分を守ろうとしている。

けれど、その鎧は、もろく、こわれやすく、隙間だらけだ。

その隙間から、時折、本当の彼がのぞいたとき。あるいは、鎧が耐えきれずに全壊してしまって、陰部が裂けて血塗れになったとき。本当の彼の姿が、グロテスクな性器と血が露わになったとき。

彼を”いい子”だと言ってさんざんその優しさにつけこんでいた人々は、手のひらをくるりと反して、こぞって彼を虐めだす。そこには、彼の人間としての尊厳すら、ありはしない。だれも、彼を一人の人間として扱わない。そうして、心がばらばらになるのを繰り返すうち、彼は、そうそう人間を信じられなくなってしまった。自分が愛されるという確信を、持てなくなってしまった。

それでも、彼は、そんな人々を責めることができない。むしろ、自分は惨い仕打ちを受けて然るべき存在なんだと、人々を受け入れてしまう。何かを責めようにも、自分を責めることしかできない。ありのままの自分なんかじゃ、愛される価値なんてないと思っている。自分が無条件に愛してもらうなんて、図々しいとさえ思っている。だから、彼は、人々に優しくする。困っていたら、なんだって手伝ってあげる。仕事だって、真面目にやる。彼がふりまく自己犠牲的な愛、それは、彼の贖罪行為なのだ。単なる「都合のいい存在」としてでも、一時だけでも、自分なんかを好きになってくれた人々への、せめてもの罪滅ぼしなのだ。

彼は、人々を憎んでいる。けれど、殺せない。あんなに愛した人々を、殺せるわけがない。だから、自分が消えるしかない。完全な贖罪のためには、自分の手で、自分を殺すしかない。身の程知らずの恋をした存在には、必ず罰が下される。服すら着られない人間未満のくせに、人間を必死に愛するなんて、そんな、世界の法則を無視した愚かな恋をしたおまえが悪い。こんなふうに、彼は、彼を責め続けている。

彼は、愛されたい。愛するだけじゃなくて、愛されたい。誰かに愛されることで、誰かを心の底から信じたい。その人に自分の片割れを委ねた分だけ、自分もその人の片割れを背負いたい。その人と自分のために生きていたい。それを、生きる理由にしたい。人として、幸せに、なりたい。

けれど、今の彼は、幸せになれない。人を信じられなくなってしまったから。誰のことも、心の底から信じられなくなってしまったから。だから、彼は今なお、孤独に戦っている。内面におびただしい傷をためこみながら、自分だけを命がけで守りながらも、自分のことしか愛せない、自分のためにしか生きられない苦しみと戦っている。

地獄。

彼は、自分という地獄の中で、喘ぎ続けている。

sketchbook – 彼のスケッチブック

In preparation,,準備中…

May lilly Monster – メイ・リリー・モンスター(Mad – マッド)

鈴蘭の子の片割れ

ローニーから”自分”を分け与えられた、ぬいぐるみのクマの男の子。彼のいちばんの宝物で、あだ名はメイリー。蝶ネクタイとサスペンダーを付けたおしゃれさん。彼のおばあちゃんに作られたもので、しばらくはただのぬいぐるみだったが、彼のことを一身に受け留めるうち、神さまのいたずらか何か、現実に生命機能を得てしまったらしい。食事も排泄も呼吸もしないが、外界の刺激に反応し、自ら体を動かすことが出来る。何らかの意思を持っているのかは不明。彼が生まれた時に贈られてから、一瞬たりともふたりが離れたことはない。

彼は、自分の分身として、メイリーと遊んでいる。人々を信じられず、自分を開くことができない彼は、メイリーを、自分が唯一”本当の自分”を開き、曝け出せる相手だと思い込むことで、かろうじて生き続けている。だから、ある意味、メイリーの存在は彼の生命線である。

彼は、メイリーに、”幼い頃の自分”の影を見ている。まだ無邪気な笑顔を振りまいていた、人々を純粋に信じ、愛していた、無垢な頃の自分。地獄に叩き落とされた現在の彼は、そんな”幼い頃の自分”を憎んでいる。時折、心が渇ききったときに、それを殺したい欲望に駆られる。

だから彼は、両手でメイリーの首を絞め、その生命活動が止まる寸前まで、陰部をぐしゃぐしゃに刺して犯すのだ。何度も突き刺されるうちに、メイリーの股間は裂け、性器として十分機能するようになっている。メイリーの詰め物は、既に余すことなく彼の血と精液に塗れている。

彼は、”本当の自分”を悟られまいと、自分の負った傷を外面に出すことをしない。その代わりに、傷を内面、臓器の内壁にため込んでいる。おびただしい数の傷からは血が流れ、内部の空間を満たしていく。そう時間のかからぬうちに、彼の内臓は血で一杯になり、本人がそれを自覚してからそう時間のかからぬうちに破裂する。性器はどうしようもなく裂け、信じられない量の血が噴き出す。彼の鎧は全壊し、彼の本当の姿が露わになる。

そうすれば、ますます虐められてしまうことになる。それを何度も繰り返し、打ちのめされ続ける内、彼は、少しでも自分を守ろうと、グロテスクな性器と血を、”本当の自分”を人々に見られずに済むように、自分が破裂しそうになった段階で性器をメイリーの陰部に突き刺し、その中に発散するようになったのだ。それが習慣になってからは、人々の虐めがほんの少しだけましになっている。

このことは、彼とメイリーの間だけの秘密である。

今日も、彼は、どこか、誰にも見られぬところで、メイリーを犯している。

しかし、メイリーの存在がありながらも、彼が孤独であることには変わりない。何故なら、彼にとってのメイリーはあくまでも”もうひとりの自分”であり、けっして”他人”ではないからだ。

メアリーとのかかわりは、彼に”自分も誰か他人を信じることができる”という甘い幻想を見せてくれる。しかし、幻想が覚めて、メイリーがあくまでも自分の分身だと思い出してしまえば、結局、”おまえは、自分自身しか信じられないし、自分自身しか愛せない”という事実を否応なく突き付けられ、ますます自分という地獄に陥るばかりなのである。

gallery – ギャラリー

rough sketch – ラフスケッチ

To the end that never ends – 終わらない終わりに

ローニーは、あなたに委ねています。

最後の希望を、あなたのことを、信じています。

だから、彼のことををどうするも、あなたの自由です。

彼を虐めれば、彼は、それすらも自分の罪滅ぼしとして受け入れて、ずっと耐え続けるでしょう。

彼を殺せば、彼は、遂に自分という地獄から解放してくれたことに感謝し、優しい微笑みを浮かべながら、恍惚の海の中で、快感に呑まれて溺れ死ぬでしょう。

彼に大切なものを打ち明ければ、それ以上に、彼は、大切なものを、あなたに打ち明けてくれるでしょう。

彼に語り掛ければ、それ以上に、彼は、あなたに語り掛けてくれるでしょう。

彼を愛をもって抱きしめれば、彼は、それ以上の愛をもって、あなたを抱きしめ返してくれるでしょう。

あなたの好きなように、接してあげてください。

この世界のだれも、あなたの選択を責めることもできないし、褒めることもできないのですから。

けれど、ひとつだけ言っておきたいことがあります。

もしも、今、あなたがひとりで苦しんでいるのだとしたら。

胸が張り裂けそうな痛みに耐え続けているのだとしたら。

その痛みは、決して、あなただけのものじゃ、ありません。

ここにも、あなたと同じようにもがき、喘ぎながら戦っている男の子がいます。

そして、その男の子は、今日も一生懸命に生きています。

ひとりぼっちの彼が、一人でも多くの、孤独な人間たちの親友に、あなたの親友になれることを、心から願っています。


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